=院長日誌補足=
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歯科一般、小児歯科。痛くない治療、丁寧な治療をこころがけております。消毒・滅菌も万全です。
2002年2月号
「歯医者の道具のハナシ」
日誌の目次は下の方にあります

2002/02/01 (金)

歯科ユニット
 歯医者では一般には使われない様々な道具や材料を使用している。
 歯を削る道具をドリルだと思っている方が一般的だろう。
 歯を抜く道具をペンチだと思っている人も多い。

 今月は歯医者がどういう道具・器材、そして材料などを使用しているのか、書き連ねていこうと思う。

 歯医者の治療用の椅子のことを「歯科ユニット」という。略して、単に「ユニット」という場合もある。
 これがないと歯医者はできない。
 上下とリクライニングする椅子、歯を削る器具一式、口をゆすぐ鉢、その他もろもろが一つにまとまっている。

 あの装置は一式で平均だいたい300万円から400万円する。国産の最高級のものや、ドイツ製のもので1000万円くらいするユニットもある。
 安いもので200万円くらいのものもあるが、器具がオプションであったりして使い物にならない場合も多い。

 ユニット3台で1000万円を越すのである。
2002/02/04 (月)

タービン
 歯を削る道具である。
 正式な呼び名は判らないが、概してタービン、もしくはエアタービンと呼んでいる。

 その名の通り、圧縮空気で小さな羽根車を回して超高速で先端についた「歯を削るポイント」(小さなドリル)を回す。
 その回転数たるや、最高で1分間に50万回転にも及ぶ。

 どんなに高性能な車のエンジンでも最高回転数は1万回転/分であるから、いかにその回転数が大きいかが判る。

 これが、単に空気の力「だけ」で回るから、なお驚きである。

 これだけ回転数が高いと、削られたモノはたちまち熱をもつ。また先端のポイントがすぐに目詰まりして使えなくなる。
 そのために「注水」が必要になってくる。

 エアタービンは、かなり精密にできており、あれ一本でだいたい15万円くらいはする。
2002/02/05 (火)

エンジン
 昨日同様歯を削るツールだが、こちらは回転数が遅くトルクのあるもの。
 また、タービンが「歯を削るドリル」のすぐ近くに「駆動装置(それこそタービン)」があるのに対して、エンジンは手で握る部分に駆動装置がある。

 駆動装置はモーターと呼ばれるが、圧縮空気で回すタイプと電気モーターで回すタイプとがあり、一長一短である。

 エンジンは先端の半分をアタッチメントのように付け替えることができる。
 歯を削ったり研磨するドリルをつける「コントラアングル」と呼ばれるアタッチメントと、入れ歯を削ったり銀歯を磨くドリルをつける「ストレートハンドピース」と呼ばれるアタッチメントである。

 回転数は最大でもタービンの10分の1程度だが、トルクがあり、用途によって使い分けることになる。

 エンジンもだいたい1本10万円から15万円くらいはする・・・
2002/02/06 (水)

3ウェイシリンジ
 タービンとかエンジンとくれば、ミッションときそうだが、そう上手くはいかない。

 これは水が出たり、圧縮空気が出る道具である。
 昨日、一昨日紹介した、タービン、エンジンとこの3ウェイシリンジとがだいたい一組になって「歯科ユニット」に組み込まれている。

 さて、水が出て、空気が出て、もう1ウェイはと言うと、水が出るボタンと空気が出るボタンの両方同時に押すと「霧」が出るということである。
 つまり3通りの使い方ができるから「3ウェイシリンジ」ということらしい・・・

 この道具はいくらするのか判らない。

 ただ、先日ウチで使っているシリンジの調子が悪く、メーカーの人に修理に来てもらったら「20000円近く」請求された!
 もっとも内訳の大半は「出張料」ではあるが・・・

 やった作業は中の小さなOリングを一個交換しただけである・・・(涙)
2002/02/07 (木)

レントゲン
 歯医者で使うレントゲンの装置は、大きく分けて2種類ある。
 まずは、一般的でこれがないと歯医者とは言えない、局所だけを写す小さなレントゲン装置。(デンタルと慨して呼ばれる)

 フィルムのサイズはだいたい40×30ミリくらいである。(子供用の一回り小さなサイズもある)
 写る範囲はせいぜい歯の大きさで3本分くらい。フィルムは口の中に入れ、外からレントゲンを当てて写すのが普通である。(他にも特殊な用途に用いられる場合もあるが)

 明日記述する予定の「口の中全体を写す」レントゲンの装置に比べて、歯の大きさが比較的実際に近く写ること、そして精密な細かい部分まで写りこむのが利点であろう。(当然技術的に正確に用いられた場合)
 必要な部分だけ最小限に写すことができ、患者さんの料金負担も小さい。

 装置もだいたい80万円くらいといったところだろうか・・・

 欠点は、狭い範囲しか写らないことと、嘔吐反射の強い患者さんには辛いところだろうか・・・
2002/02/08 (金)

レントゲン(その弐)
 口の中全体を一度に写すレントゲン装置をパノラマとかオルソパントモなどと呼ぶ。

 口の中全体というより、歯のある部分全体の断層を取るレントゲンである。

 最大の特徴は数秒で全部の歯の状態、顎の骨の状態、そして顎の関節までもがおおよそ把握できるレントゲンが撮れることであろう・・・

 ただし、鮮鋭さでは、昨日紹介したデンタルに劣る。また実際よりもやや大きめに写ってしまう。

 つまり、局所の精密な像を得るというよりも、全体的に悪いところがないかおおまかに把握するためのもの、といった意味あいが強い。

 口の外から撮り、フィルムも口の外にあるので、患者さんの負担は小さい。

 この装置の価格は安くても300万円はする。そして設置するスペースも大きい。
 そのため、古い医院などでは置いていないところもあると聞く。別に珍しい装置ではないと思うのだが、患者さんによっては、「は〜今の歯医者さんは、こんなすごい装置があるんですね〜」などと感動する人もいる・・・

 また、局所的な小さい写真よりも位置関係が判りやすいため、患者さんへの説明もしやすい。
2002/02/11 (月)

スケーラー
 なるべく通常用いられる道具から書いているつもりである。
 今日、ご紹介するのは「歯石を取る器具、機械」である。

 手用と超音波に大別されるこの器具は歯石を取るものである。

 本当は手でガリガリやる器具と超音波スケーラーは用途に応じて使い分けなければならない性質のものである。

 ウチでは主に超音波スケーラーを用いているので、それをメインに書く。

 超音波スケーラーはその名の通り、刃先が超音波で振動し、その小刻みな振動で歯石を叩いて歯から落とすものである。
 タービン同様、あまりに振動数が大きいので、一箇所に当てていると発熱するため、注水が必要である。また注水は落とした歯石を流す役目もあると思う。

 振動数は、「超音波」と言うくらいだから、一秒に2万回以上は振動しているはずである。ピ〜〜〜っとやや不快な音はするが、ほとんど痛みはない。

 自分は超音波スケーラーしかやられた経験がないから、比較できないのだが、手でガリガリ歯石を削り取られる方が痛いそうである・・・

 そうそう超音波スケーラーのお値段はだいたい20〜30万円する。
2002/02/12 (火)

バキューム
 ユニットに標準的に装備されているもので、紹介が遅れた器具があった。

 これは主に「口の中に溜まった水」を吸い出すものである。
 バキュームというと、「バキュームカー」を思い出してしまうが、バキュームという言葉自体は元来真空という意味である。

 装置の大元の部分で真空状態に近づけると、圧力が低くなって気体でも液体でも吸い取るようになる。
 掃除機も同じ仕組みである。

 ちなみに、バキュームの本体は通常「機械室」という部屋に置かれている。
 と言っても、もの自体はポンプなのであるが・・・
 そして、床下の配管を通って各ユニットに繋がっている。
2002/02/13 (水)

ちょっと横道
 昨日バキュームに関して書いたら、掲示板で「真空」という言葉の意味合いが話題になった。

 僕は「真空」という言葉は「All or Not」で空気があるか、ないか、を念頭においていたのだが、言葉の使われ方はそういうことにこだわらないらしい。

 つまり、気圧がちょっと低い程度でも「真空」状態に至る過程として、真空という表現がなされるようである。

 そもそも真の真空なんてものはよほどのことがない限りないだろうし、あとはその程度問題である。

 日本語は難しい・・・
2002/02/14 (木)

自現機
 これは、他の業界で使われる呼び方ではないと思うのだが、恐らく「自動現像機」の略ではないかと思われる。

 過日書いたレントゲンのフィルムを現像する装置であるが、フルオートなのである。

 ものの4〜5分でフィルム現像、定着、水洗、乾燥をしてくれる優れものである。

 僕は昔写真を趣味にしていて、白黒フィルムの現像は自分でしていた。
 これが結構な手間であった。特に水洗は1時間くらいかけて念入りに行ったものである。乾燥も一晩くらいかけた。

 それがどうして、4〜5分で全ての行程が終わるのかよくわからない。
 フィルムの質が違うのだろうか?・・・

 一度、この装置で普通のカメラに用いる白黒フィルムも現像できないか試してみようと思ってはいるが、まだ実現していない。

 自現機はだいたい70〜80万円と結構なお値段がする。
2002/02/15 (金)

オートクレーブ
 高圧蒸気滅菌器のことである。
 あらゆる細菌・ウィルスに対して有効であるとされているが、どっこい火山地帯の極めて高圧蒸気の中でも生きる微生物もいるらしいから、あやしいものである。

 ただ、現実的にはまず大抵の病原菌は死滅するもっともポピュラーな滅菌装置である。ちなみに滅菌とは消毒のもう少し念のいった手段ではある。

 他に乾燥状態で高熱を用いる滅菌装置や、アルコールを用いて高圧蒸気滅菌する装置、有毒ガスで滅菌する装置などもあるが、一長一短であろう・・・

 大きさや、どこまで自動でできるかによってかなり価格にバラツキがあろうが、だいたい30万円くらいから上は100万円以上する装置もあるかも知れない・・・
2002/02/18 (月)

ダイヤモンドポイント
 今日から少しこまごましたものについて触れていこうと思う。
 これは4日に書いた「タービン」の先端に付けて使う小さなドリルである。

 タービンの先端に付けるドリルは概して「ポイント」と呼ばれている。そしてダイヤモンドポイントは、その名の通り削る部分にダイヤモンドの粉がまぶしてある。

 歯は硬い。特にエナメル質は硬く、金属製ではすぐに歯こぼれじゃなくて刃こぼれをおこして削れなくなってしまう。
 ダイヤモンドは地上で最も硬度の高い物質であるので、それをもってしないと文字通り「歯が立たない」というわけである。

 まあ、恐らくは人造ダイヤモンドであろう。

 削る用途によって何十種類も形態がある。またダイヤモンドの粒子の大きさにもよってバリエーションが豊富で、下手すると100種類を超えるかも知れない。

 標準的な価格は一本750円だったかな?そんなに高価なものではない。
 また削れる限り滅菌して何度でも使うことができる。
2002/02/19 (火)

エンジン用バー
 5日に書いたエンジンにつけるツールは様々である。
 コントラ用、ストレートハンドピース用合わせて、細かい違いも含めたら、恐らく何百種類にも上るだろうと思う・・・

 タービン用のドリルは「ポイント」と呼ばれるのに対して、エンジン用のツールは慨して「バー」と呼ばれる。
 恐らくは慣習的なものと思われるが・・・

 コントラ用は主に口の中で用いられるものであり、ほとんどは金属でできている。材質はカーバイドと呼ばれる特殊な金属か、鉄を主成分とした合金だろうと思われる。
 主用途は虫歯の部分を削ったり、研磨したりである。

 もちろんバーの種類に応じて用途は異なる。

 ストレート用のバーはものすごいバリエーションがあり、銀歯の調整、入れ歯の調整から始まり、それぞれの研磨などが主用途であるが、その種類は数え切れないくらい豊富である。

 これらのツールは概して安価なので、コスト意識を強くもったことはない・・・
2002/02/20 (水)

麻酔
 「麻酔」というのは道具ではないが、麻酔に使う器具一式を紹介する。
 まずは、注射であるが、これは普通のお医者さんが使うようなものとは異なる。

 麻酔の液は規格化された特殊なアンプルに入っていて、その規格に合った歯科の麻酔専用の注射筒がある。そして注射針も特殊なもので、極めて細い歯科専用のものである。

 注射筒は手動のもの、電動のものに分かれるが、僕が愛用しているものは手動の特殊なものである。

 麻酔は恐らく歯医者でされるコトの中でもっとも嫌なコトの一つだろう。
 だが、やり方一つで随分痛みを感じないで済む。いろいろなやり方があるが、「麻酔の仕方」を紹介するわけではないので、割愛する。

 麻酔の注射器のお値段は手動の安いもので、5000円くらいだろうか・・・ 
 電動の高級なヤツは15万円くらいのもある。

 僕が使うのは手動の高級なヤツ。5万円くらいだったかなぁ?・・・
 電動に比べて「注入スピード」が任意に調整できるのがお気に入りである。
2002/02/21 (木)

電気メス
 仕組みはよく判っていないが、電気的な一種のパルスにより、「切開」、「止血凝固」をする器具である。

 歯科で用いるのは、およそ歯茎の余分な部分を取り除いたり、口の中の小手術に用いる。

 最大の利点は「切開」と同時に「止血」ができることである。
 そして力を入れなくても実によく切れる。

 また「刃」のメスと違い、刃先の向きが決まっていないので、自由な方向に切開できるのも楽である。

 欠点はちょっと肉を焼くような匂いがすること・・・これは先日述べたバキュームで煙を吸うことによってかなり回避はできる。

 装置の価格は千差万別だが、うちにあるのは20万円くらいだろうか?・・・
2002/02/22 (金)

基本セット
 今日は日付にやたら2が多い日である・・・

 歯医者で使う小器具をまとめたモノを基本セットという。
 それぞれの歯科医院でちょっとずつは中身に違いがあろうが、ウチではピンセット、ミラー、探針、セメント充填器、エキスカベーターをワンセットにしている。

 ピンセットはもちろん歯科用の、先が鋭く、そして曲がっているものである。ミラーは柄の先に小さな丸い鏡が付いたもの。探針は柄の先に曲がった針が付いたもの。
 セメント充填器は柄の両方の頭に小さなヘラと丸い玉が付いたもの。エキスカベータ―は柄の頭に小さなスプーン状のヘラが付いた器具である。

 もちろんそれぞれに用途がある。

 ふとここまで書いて、エキスカベーターは通常あまり使わないことに気が付いた・・・
 明日、基本セットから外そう・・・
2002/02/25 (月)

光照射器
 小さな虫歯を治す場合、一種の白い樹脂を詰めて元の状態に近い見かけに治すことが多い。特に前歯の場合は・・・

 この樹脂は現在ではほとんどのものが、最初ペースト状をしており、光を当てると固まる性質を持っている。

 特に青色に近い特定の周波数の光に対して、固まりやすい性質があるため、強力なライトが必要となる。
 これを「光照射器」と言う。

 だいたいが「光線銃」の様な形態をしており、先端から協力な光を出す。
 10秒単位で、照射の時間を設定できたり、10秒刻みで「ピー」っと音がする場合もある。

 10年くらい前まえは「紫外線」を当てないと固まらない樹脂もあり、その場合は保護のメガネをかけたものだが、最近の「可視光線」で固まる樹脂用の照射器は直視しない限り大丈夫である。

 まだ勤務間もないスタッフが「照射器を持ってきて」とドクターに命ぜられて「消火器」を持ってきたという笑い話もある・・・

 そうそう、照射器の値段は非常にバラつく。5〜6万円の廉価なものから20万円くらい。最近超強力なプラズマ照射器という製品も出てきているが、これは70〜80万円もする・・・手が出ない・・・
2002/02/26 (火)

こまごましたもの
 抜歯に使ういろいろな器具、根の治療に用いる小器具、他、様々な道具がある。
 小さなものはとても書ききれるものではない。

 開院準備の時にリストを作ったら、A4の紙が5枚くらいびっちり埋まった。
 一枚に50アイテムはあったろうか?・・・

 いろいろな道具、材料の管理はスタッフにまかせているが、よくやってくれていると思う。
 「残念ですが、今日はレントゲンのフィルム切らしちゃって撮れないんですよね〜」なんてことがあったら大変だからである。

 一番困るのは「一台しかないもの」の急な故障である。
 予備があれば憂いなしなんだろうが、そうそう複数台備える余裕もない・・・

 一度オートクレーブが突然作動不能になり、往生した。
 幸い、予備に「乾熱滅菌器」を備えていたので、急場は凌げたが・・・
 その装置はたまたま歯科の業者が開院時に「これ、どっかの歯医者が使わないから引き取ったんだけど、先生使わないかい?」とくれたものだった。
2002/02/28 (木)

総括
 歯医者の設備はお金がかかる。
 ウチはなるべく安くあげているつもりである。3台あるユニットの一台は中古だし、レントゲンの機械も、一台は先輩の先生から譲っていただいたものである。

 もちろんどちらもオーバーホールしてちゃんと問題なく稼動する。

 ウチにはないので紹介していないが、レーザー装置なぞを導入すると、300万円から600万円くらいするらしい・・・
 これまたウチにはないので紹介していないが、レセプト作成コンピュータなども一式300万円前後する。

 この稿を進めている途中、歯医者の設備にかかるコストを提示することに何の意味があるのか?という声を頂戴した。

 別段深い意味はない。
 歯医者に行って、何気なく座る「椅子」が最低300万円すること、レントゲンを撮る装置が最低300万円することを知って欲しかっただけである・・・

 ウチの設備は、総額で1500万円くらいであろうか?・・・
 恐らく新規開業の中では平均よりも少ない額だとは思うが・・・

2000年: 7月号 8月号 9月号 10月号 11月号 (以上、雑記)
2000年:12月号 「カレンダーと時間のナゾ」
 (筆者イチオシの力作です)
2001年: 1月号 「バカは風邪ひかない、と進化論」 
2001年: 2月号 「歯はなぜしみるのか?」
2001年: 3月号 「僕のIT革命」 (閲覧者の反響が高かった月です)
2001年: 4月号 「医療と経済」
2001年: 5月号 「歯医者の独り言」
2001年: 6月号 「小児歯科について」 
2001年: 7月号 「医療とは何か?」 
2001年: 8月号 「院長の知られざる過去」 
2001年: 9月号 「院長の知ってどうする過去」 
2001年: 10月号 「その後の僕のIT革命」 
2001年: 11月号 「院説」 
2001年: 12月号 「歯のハナシ」 
2002年: 1月号 「音楽のハナシ」