=院長日誌補足=
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歯科一般、小児歯科。痛くない治療、丁寧な治療をこころがけております。消毒・滅菌も万全です。
2002年7月号

「僕の口の中」

2002/07/01 (月)

乳歯の頃
 僕もヒトの子である。虫歯はある。ひどい痛みに悩まされたこともある。

 今月は僕の口の中について書こうと思う。

 自慢じゃないが、歯は全て揃っている。親知らずも全部ある。だから全部で32本ある。

 子供の頃、結構虫歯が多かった。親は歯磨きしろ歯磨きしろとは言っていたが、熱心に口の中をチェックしようとはしていなかった。

 僕の親の虫歯予防法は「虫歯になると、歯医者に行かなければならない。歯医者とはとても恐ろしい処で、歯に注射をされるのだ、ということを言い聞かせること」だった。

 お陰で僕は幼少時より、「行ったこともない」歯医者に非常に恐怖心を覚えていたものだった。

 小学校4年の頃、もう脱落間近の乳歯がひどい虫歯ですごく痛くて、腫れていた記憶が残っている。
 それでも、親に申告せず、我慢した・・・数ヶ月奥歯でモノが噛めず、前歯ばかりで食事を噛んでいた記憶がある。

 それでも歯医者に連れて行かれるのが怖かった。
2002/07/03 (水)

初めての歯医者
 僕が初めて歯医者に行ったのは、小学校高学年の時だった。
 近所の歯医者さんだった・・・
 しかも初めてなのに、親も誰も付いて来ず、一人で行かされた記憶がある。

 何回か通院した。今からかれこれ30年位前の治療である。
 後で判ったのだが、大臼歯の何本かの噛む面の虫歯を削られ、アマルガムという合金を詰める治療だったようである。

 最近になって、何本かアマルガムが脱離してはいるが、何本かはそのまま残っている。

 アマルガムは近年「水銀を含んでいる」ということで問題視される傾向にあり、しかも黒ずんで見えるため、見かけはよくないが、30年くらい残っているということは評価できる治療法なのかも知れない。
 (もちろん賛否両論ある)

 ちなみに、その初めて行った歯医者さん、今でもウチのご近所で歯医者さんをやっている・・・しかも50メートルの至近距離・・・

 今から30年前・・・予防のフッ素なんてものはなかったし、ブラッシング指導なんてこともされなかった。それでも、永久歯になった僕の口の中にはその後ほとんど虫歯らしい虫歯はできなかった。
2002/07/05 (金)

僕の虫歯
 僕が0歳か1歳の頃、「百日咳」という病気にかかったらしい。
 今でこそ予防のワクチンが必須になっていて、滅多にかかる子供はいないようだが、なぜか、僕はこの病気にかかってしまったらしい。

 その時飲まされた抗生剤の影響か、歯に少し縞模様がある。

 テトラサイクリンといった一部の抗生剤では、特にその傾向が強く出る。
 僕が飲まされた薬がその系統の薬だったかどうかは定かではないが、永久歯が骨の中で形成される最中に、ある種の抗生剤によって着色することはありがちなことである。

 僕の母はそのことを気にしていた。

 いつの時点か、どこで治療を受けたかはここでは書けないが、とある歯医者さんで前歯の治療を受けた。というか母に「前歯を治してもらってこい」と言われた。
 昨日書いた至近の歯医者さんではない。
 別の歯医者さんである。

 僕の記憶に間違いがなければ、その歯医者さんで、僕は上の前歯の歯と歯の間をのきなみ治療されてしまった。小さく削って詰める治し方である。

 これが、僕が虫歯の痛みを知る第一歩だった・・・
2002/07/08 (月)

普通のヒト
 もちろん、僕が歯学部に入り、そして歯医者になるなんてことは、中学や高校の頃は知る由もなかった。

 つまりは、歯や歯茎、口の中のことに関しては、全く無関心だった!
 永久歯が何本あるのかも知らず、歯の種類や構造なんてことについても、全くの無知だった!

 今思えば、学校教育でもうちょっと人間の体の仕組みや構造、そして疾患のことに関して教育してもいいのではなかろうか?・・・
 三角関数や大化の改新もいいが、歯が何本あるのか・どんな仕組みなのか、消化器官がどういう経路なのか?脳の大まかな仕組み、血液の大まかな成分くらいは義務教育で教えてもいいのではないだろうか?

 そうやって自分の体のこと、そして疾病に対する意識を高めることこそが、「医療費削減」にも繋がるのではないかとすら思える・・・

 そうそう、他にも学校教育には注文を付けたいことが山ほどある。
 が、今月の話題ではないので、深入りは避けよう・・・
 あっ、別に学校関係者に文句を言いたいのではない。日本という国が抜本的に廃れないようにするために、根本からカリキュラムを見直してはいかが?と提言したいのである。

 微分積分ができる、あるいは難しい法律のことが判る・・・それ以前に、歯が何本あり、どうしたら虫歯になるのか?
 心臓はどこら辺にあるのか?肝臓はどんな役割を果たしているのか?
 そういった身近なことをもっと教育してはいかがだろう?と思うのだが・・・

 そうそう・・・月に行くエネルギーやテクノロジーを開発しながら、足許の地球に関してはわけも判らず環境を破壊してきたという過ちに似ている気がする。
2002/07/10 (水)

虫歯の放置
 大学に入って4年目か5年目の頃だった。
 実習かなにかで「デンタルフロス」の使い方の実習があった。

 この時、高校時代に詰めた詰め物が一箇所取れてしまったのである。
 治療自体のせいなのか?それともフロスの抜き方が悪かったのか?それも今から10数年前のハナシである。どういう状況で詰めたモノが取れたか、ぜんぜん把握していない。

 そして、取れても何も不具合がなかったので、そのまんま放置していたのである!今考えると、なんとお粗末な話であろうか!

 舌で触ると、歯と歯の間にポッカリ穴が空いているのは重々承知していた。少し違和感はあったが、水もしみない。噛んで痛くもない・・・
 まあ、放っておいても大丈夫だろう!いつかそのうちに治そう!その程度にしか考えていなかった。

 歯学部に通う学生でも、そんな程度の意識なのである。
 ましてそうじゃない方々が、痛くないので虫歯を放置しておく、という気持ちは今でもよ〜〜〜く判る。

 ただ、一点・・・
 「今、大学で歯のこと、虫歯のことを学んでいる。このまんま虫歯を放置すると、どのような顛末になるのだろう?身を持って体験してみよう!」という気持ちもちょっとあった。

 でも、本心は・・・「歯医者は怖い!」であった・・・
2002/07/12 (金)

虫歯の放置
 しかし、ひどいハナシである。
 今でこそ、患者さんに「虫歯を放置しても治りません。早めに治した方がいいですよ」と言っている僕が、学生時代、そんなテイタラクだったのだから!

 実は今までも書いてきたが、僕は歯医者さんが怖いのであった。
 歯学部に入ってなお一層怖いと思うようになったと言っても過言ではない。

 口の中を型取りするヤツ(「印象」という)の実習では、オエッと吐きそうになり、ボロボロ涙をこぼしてこらえていた。

 学生同士で麻酔を打ちっこする実習では貧血を起こして倒れた。

 いや・・・小学校の時、血液型の検査のため、耳にちっちゃく傷を付けられた時ですら、貧血を起こして倒れたくらいである。

 身体のどの部分にせよ、痛いことをされるのが苦手だったのである。

 歯医者になるため、いろいろ勉強し、いろいろ判ってくるにつけ、なんと歯の治療とは拷問と紙一重なんだろう!とまで思うに至った・・・

 まあ、とにかくそんな状態であるから、痛くもないのに自分の歯を治療してもらうなんてことはまっぴらゴメンだったのである。
2002/07/15 (月)

虫歯の痛み
 しかし、虫歯を放置しておいて、いつまでも痛みが出ないワケがない!
 歯の詰め物が取れて、じきに冷たいモノが凍みるようになるまで半年もかからなかった記憶がある。

 実は凍みるというのは黄色信号である。
 そこで治療に着手しなければ、神経をいじらなければならない可能性が高い。

 しかし、それでも放置した。
 当該部をよく磨いていたつもりだったが、しょせん歯と歯の間の穴に歯ブラシの毛先が行き届くわけがない。

 じきに「モノを噛んでも痛む」ようになってきた。
 まさに教科書通りの進行だった!
 特に、穴の開いたところにモノが詰まると痛かった。

 それでも放置した。
 放置すればするほど、実は治療はやっかいになる。それも知っていた。

 そして、とうとう、「黙っていても痛む」という状況になった。
 これが実〜〜〜に痛かった!いわゆる夜も眠られないくらいの痛みである。
 教科書通りである・・・

 それでも耐えた。どのくらいの期間、黙っていても痛みのある期間があったか覚えていない。
 ある時、ふっと痛みが消えた。

 それは虫歯のバイキンが「神経」への攻撃を終えた段階に達することを意味していた・・・
 まさに教科書通りだった!
2002/07/17 (水)

平穏な日々の後
 歯の神経が死んでしまえば、痛みはウソのように収まる。
 しかし、もちろん虫歯が治ったわけでなく、さらに奥では着々と虫歯のバイキンが悪さをしているのである。

 しばらく痛みはなかった。

 大学を卒業し、医局に入り、いろいろと多忙に見舞われていた時、突然痛みに襲われた。しかも、こんどは「歯茎の腫れ」を伴っている。教科書通りだった!

 虫歯のバイキンが歯の根元の骨の中で数を増やし、それが中で収まりきらなくなって歯茎の方まで広がったのである。

 さすがにこのまんま放置するのはマズイと思い、医局の信頼のおける先輩に今までのてんまつを話した。
 即座にレントゲン写真を撮られ、そのまんまユニット(治療用椅子)に座らされ・・・

 痛みはウソのように収まった。排膿路(膿が出てくる穴)が確保されたためであった。

 しかし・・・しかしである・・・これまた情けないハナシではあるのだが、痛みがなくなって、そのまんままた放置してしまったのである。

 (まったく患者さんの鑑とはなりえない歯医者なものである!)
2002/07/19 (金)

利尻島で・・・
 その後も年に一度くらい少し痛みが出たり、わずかに腫れるなどといった症状が繰り返したのであるが、抗生剤なんかを飲んだりしてごまかしていた・・・

 卒後4年目のある時、出張で利尻島という島に一ヶ月滞在しなければならなくなった。
 利尻島は周囲約60キロのほぼ円状の島で、人口は約1万人である。
 歯医者は、出張先を含めて4軒くらいしかない。

 出張期間中のある日、当該の歯が痛み出した・・・
 抗生剤と鎮痛薬を飲んだが、あまり効き目がない・・・
 焦った。もちろん島の他の歯医者に行く気もしない。

 根の治療の仮の詰め物を外して、自分で根の治療をしようと思ったが、ガチガチに固まっていて外れない!

 そこで・・・自分で鏡を見ながら、タービンで歯の裏の詰め物を削った。
 鏡を見ながら自分で根の治療をした。

 この時はさすがに情けなかった。
 よし、出張が終わって札幌に戻ったらちゃんと治療を終わりまで成し遂げよう!と心に誓ったものである・・・
2002/07/22 (月)

喉元過ぎれば・・・
 利尻島で自分で鏡を見ながら、何度か治療をし、札幌に戻ったらちゃんと治療の続きをしよう!と心に決めた!

 はずであったのだが・・・
 実は、またそのまんま放置してしまった。全くなんという情けない歯医者だろう!

 自分で鏡を見ながら治療したのが功を奏したかどうかは判らないが、その後しばらく痛みがなかったのである。
 本来ならば、そういう時期にきちんと先に進めば根の治療は完了するのであるが。

 なんだか、今月は書いていて自分で情けない・・・

 だから僕には、患者さんが虫歯を放置してひどくなっても、治療を途中で中断して来なくなっても、叱責する権利はさらさらないのである。

 今月に入ってこの稿を書き進めるにあたり、副院長に「今月中には根の治療を完了したい」旨を伝えたのであるが、なかなか先には進まない。

 そろそろまた根の治療をしてもらわないとだめな頃のはずである・・・
2002/07/24 (水)

つくづく・・・
 今月の日誌を見返してみると、情けない自分が浮き彫りになってしまう。

 ヒトは時として直視したくないことから逃げる。
 逃げても、当面は問題がなかったら、避けようとする。

 僕のひどい虫歯は一本キリである。もちろん、小さな虫歯で進行が止まっているもの、あるいはかつて治療を受けた歯は何本かあるが・・・

 そうそう、以前から載せようと思っていた僕の口の中の「一覧レントゲン」をお見せしよう。


 最近では最初っからデジタルで撮り、デジタルに保存し、出力もデジタルというレントゲン装置もあるが、ウチは旧態依然の装置ではある。というか、ウチにデジタルなモノは何もないと言っても過言ではない。

 レセプトコンピュータすらないのであるから・・・

 というわけで、ちょっと見苦しいレントゲン写真ではある。
 白く飛んだ部分もあるが、これは歯や骨に異常があるわけではない。

 補綴といって、歯に被せモノをする治療も一箇所もない。鋳造修復物もない。

 ちょうどほぼ中央に白く写っているものがある。これが根の治療の途中の歯である。見る人が見れば、その歯の根元に少し黒い丸っこい陰があるのが判るはずである。
 これが「歯根のう胞」と呼ばれるものである。
2002/07/26 (金)

歩く見本
 患者さんから聞いたハナシである。
 ちなみにその患者さんは総入れ歯であった。

 その患者さんがとある歯科医院で、自費の「いい入れ歯」を勧められ、躊躇していたら、そこの院長先生が「ほ〜ら、こんなにいい入れ歯なんだよ」って自分の総入れ歯を外して患者さんに見せたそうな・・・

 つまり、そこの院長先生の歯自体が見本なわけだ。

 でも、その患者さんは「なんだか気持ちが悪くなって」転医したそうな・・・
 歯医者もヒトの子なんで、虫歯だらけの歯医者もいるだろうし、入れ歯の歯医者もいる。

 でも、まあ自分の総入れ歯を見せびらかす歯医者もどうかと思う・・・
2002/07/29 (月)

親知らずの炎症
 24日の全体の写真を見ても判る通り、歯茎に炎症はない。
 歯を支えている骨にいささかの欠損もない。

 たまに親知らずが痛いように感じることがある。特に右下である。
 歯ブラシを当てると痛いのである。この時は歯茎に若干の炎症が起こっているようである。

 実は歯茎の炎症による痛みの感覚と虫歯の痛みの感覚は非常に近いものがある。
 これは自分で体感できるので、確信している。

 そして歯茎に歯ブラシを当ててマッサージを続けていると、数日で痛みは収まるのである。

 もしかしたら、この事実はある誤解を生じているかもしれない。
 それは、「虫歯も初期のうちなら丹念に歯磨きをすれば治る」という誤解である。

 歯に痛みを感じ、丁寧にブラッシングする。実はそれは歯の痛みではなく歯茎の痛みでブラッシングすることによって炎症が治まり、あたかも歯の痛みが消えるように感じるのではないかと推察される。
2002/07/31 (水)

挟まりグセ
 最近になって左下の歯と歯の間にモノが挟まりやすくなった。

 時として非常に違和感がある。もちろんすぐにフロスで取り除く。
 一度モノが挟まりやすくなると、挟まりグセがつくようである。

 局所的に著しい歯周疾患をたまに見かけるが、これの原因のひとつには局所的にモノが挟まることが挙げられる。

 歯と歯の間にモノが挟まると、当然歯の位置が微妙にズレ、かみ合わせにも影響する。
 かみ合わせがズレると、当然当該の歯に余計な負担がかかる。

 そして一度挟まりグセがつくと、加速度的にモノが挟まりやすくなる。

 歯と歯の間にモノが挟まりやすい人は歯周疾患に要注意である・・・

 あ〜〜〜!しまった!
 根の治療してない〜〜〜!